ミッションMISSION
未踏の地、火星衛星「フォボス」へ
火星は、かつて水が存在した痕跡を持ち、生命が誕生した可能性も示唆される惑星です。その衛星フォボスとダイモスは、太陽系の成り立ちや太陽系内での物質輸送を知る手がかりを多く秘めています。

ミッションの概要
火星の月・フォボスから、
「10gの砂」を地球へ持ち帰る。
MMXは、はやぶさ2が成し遂げたサンプルリターン──小惑星に向かい、詳細に観測し、その表面の砂や岩石(サンプル)を採取して地球に持ち帰る──という探査を、火星衛星で行う計画です。
2026年度に打上げ、約5年をかけて火星圏を往還し、衛星を詳細観測し、フォボスから10g以上のサンプルを採取し地球へ持ち帰る、世界初の火星圏からのサンプルリターンミッションです。

ミッションプロファイル
挑戦が連続する5年間。火星圏との往還へ
打ち上げ後、約1年後に火星近傍に到着。
その後、火星衛星近くを飛行する軌道(擬周回軌道:QSO)に入り、詳細な観測をすることを計画しています。
観測、サンプル採取を終えた探査機は約1年かけて帰還し、サンプルを地球に届けます。







打上げ
種子島宇宙センターからH3ロケットによって打上げ。
1年かけて火星圈に到着
火星周回軌道に入りフォボスと似た公転軌道(擬周回軌道)を回る。
ダイモスを遠くから観測し、火星とフォボスを観測する。
フォボスを擬周回軌道(QSO)で観測
フォボス全体の形状を調べて、数十地点の着陸候補を観測する。
フォボスの擬周回軌道(QSO)から観測
フォボスでの着陸地点決定のために、候補地を詳細観測する。地形、分光、化学組成なども調べる。
フォボスの擬周回軌道(QSO)から観測
ローバの着陸と、探査機本体の着陸を2回試みる
着陸地点への降下・着陸・上昇中に観測。
ローバが探査機より先に着陸し、フォボス表面を観測。
その後、探査機本体が着陸中に、10gのサンプルを採取する。
フォボスの擬周回軌道(QSO)から観測
フォボスの科学的観測を行い、可能であればQSO軌道面を傾けた極地観測を試みる。
ダイモスフライバイを実行
ダイモスの観測を試みる。
火星圏を出発
メインエンジンを噴射し、火星圏から一気に離脱。
1年かけて地球を目指す。
地球帰還
カプセルを分離し、大気圏に突入。
カプセルは、オーストラリアで回収予定。
- DEIMOS — Image credit: NASA/JPL
- PHOBOS — Image credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona
- Mars — Image credit: NASA
- Earth — Image credit: NASA Goddard Space Flight Center / Reto Stöckli
ミッションの目的
なぜ、「火星の月」を目指すのか?
火星は、地球に似た惑星でありながら、現在は薄い大気と寒冷な環境にあります。その謎に迫るために、本来、火星そのものを調べたいところです。しかし、火星本体は重力が大きく、着陸やサンプルリターンには高い技術的ハードルがあります。そこで探査地として選ばれたのが、火星の月・フォボスです。フォボスを未来の火星探査への足がかりとして、MMXは科学と探査技術の両面から挑みます。
MISSON 01惑星科学
火星衛星の起源を探り、火星圏進化史を拓く
火星・フォボス・ダイモスを調べることで、太陽系の惑星形成や、生命の誕生・居住に必要な水や有機物などの物質がどのように運ばれたのかを探ります。
MISSON 02探査技術獲得
宇宙探査を先導する礎を築く
火星圏への往還、天体表面への到達・滞在、高度なサンプリング、遠距離通信など、次世代の宇宙探査につながる技術を獲得します。
ミッションの成果
火星の月の砂から、太陽系の謎に迫る!
火星とその衛星の起源(つまり、どのように形成されたか)は、太陽系形成論における未解決問題の一つです。火星衛星の起源には、火星への天体衝突で形成されたとする「巨大衝突説」と、太陽系外縁から飛来した小惑星が火星の重力で捕獲されたとする「捕獲説」が唱えられています。MMXは、リモートセンシング観測とサンプル分析によってその起源を明らかにするとともに、衛星周辺から火星とその大気・宇宙環境を観測し、大気物質の循環・散逸の仕組みを解明します。これらを通じて、「太陽系における生命環境の誕生と持続に必要な前生命環境の進化」という惑星科学の大目標に迫ります。


ミッションへの期待
世界を先導する、
小天体探査とサンプルリターン技術
「はやぶさ」「はやぶさ2」を通じて、日本は小天体への着陸やサンプル採取の技術を培ってきました。MMXはその技術を火星衛星へ発展させ、小惑星探査と火星探査をつなぎます。火星圏への往還や高度なサンプリングに挑み、得意技術をさらに深化させ、将来の火星探査・サンプルリターンにつながる技術を切り拓きます。

探査機について
MMX探査機の三変化と10のパーツ
MMX探査機がミッションを実現する過程には、多くの挑戦があります。約5年の長期ミッション、謎多きフォボスの地表、最大で往復44分の通信のタイムラグ、地球や月とは異なるフォボスの重力環境、限られた推進薬、宇宙空間の大きな温度変化など―。その環境下で観測や着陸、10g以上の試料を採取して地球帰還に挑みます。探査機の10のパーツから、その仕組みや工夫を見てみましょう。

打上げに向けて
探査モジュール
+
復路モジュール
+
往路モジュール
火星軌道投入時
探査モジュール
+
復路モジュール
地球帰還時
復路モジュール



電力を確保する
長期間にわたる宇宙航行と観測には、安定した電力供給が不可欠です。太陽光から電力を発生させ、探査機の各システムや観測機器に供給します。なるべく広い面が太陽光に当たるよう常時太陽の向きに追尾します。
探査機サブシステム構成図
ミッション系
MMXの目的である火星衛星・火星圏の起源の謎を解き明かすため、国内外で開発された様々な種類の観測機器を用いてサイエンス観測を行います。
データ処理系
サイエンス観測により得られたデータや、探査機の状態を知るために必要な様々なデータを地球に送信するためにデータの処理を行います。
電源系
探査機のエネルギー管理を行います。複数の太陽光パネルによって電力を発電した電力を探査機に対して供給、またその制御を行います。
航法誘導系
センサ出力などの情報を使って探査機の位置や速度を推定し、あらかじめ計画した軌道や姿勢に沿っているかを確認します。
軌道制御系
スラスタやジャイロを使って、航法誘導系で得られた目標軌道に正しく沿うように修正するための制御を行います。
着陸装置系
探査機が火星衛星に着陸するために必要な着陸脚などの装置です。
熱制御系
観測機器やその他の内部機器の性能を保つため、探査機内部の温度を適切に保つ制御を行います。
通信系
地球からのコマンドを受けたり、探査機自身のデータや観測データなどのやり取りのために、探査機と地上局が通信を行います。
構造系
探査機の往路、観測、復路モジュールや分離機構など、探査機の骨組みとなる部分です。
推進系
探査機の加速、減速、もしくは姿勢制御に使用します。
サンプラ系
サンプラ:火星衛星に突き刺したり、ガスを吹き付けたりしてサンプルを採集する装置です。
カプセル:火星衛星から採取したサンプルを安全に地球に持ち帰るための装置です。
地上系
探査機へのコマンド送信や観測データ受信などの探査機運用のために必要なアンテナ等の地上設備です。

